債権回収
債権回収のポイント
債権や貸金を回収する場合にもっとも理想的なのは、話し合いによる解決です。
今までの人間関係を壊すような強制的な手続きは、最初の段階ではお薦めできません。
しかし、いくら話し合っても問題が解決しなかった場合、法的強制力を持つ下記のような手段に踏み切ることが可能です。
債権回収の流れ
1. 内容証明郵便を送付する
内容証明を送ることで
・心理的にプレッシャーがかかる
・訴訟や債権譲渡に発展したときに、証拠としての評価が高い
といった効果が期待できます。
とはいえ内容証明は相手方に支払を強制するレベルのものではなく、相手が応じなければそれまでです。
より実行性が高いのは、「支払督捉」「少額訴訟」などの裁判所を利用した手続きです。
2. 契約書を公正証書にしておく
これは債権回収の段階ではなく、契約締結の時点で公正証書を作成しておく必要があります。
公正証書にて手続をする目的は、
・公証証書の中に「執行認諾文言」を入れておくと、相手が金銭債務の支払いをしない場合に、裁判を起こさずに強制執行ができる
・相手方に心理的にプレッシャーをかけられる(支払いをしないと強制執行を可能性があるので)
・公証人に作成してもらう公正証書は、証拠としての評価が高い
・紛失しても、20年間は公証役場で保存してもらえる
ということになります。
強制執行」という強力な効果が得られるので、大切な契約の際に有効活用できます。
3. 支払督促の手続をとる
内容証明を送っても、相手方がまったく応じなかった場合、簡易裁判所から金銭の支払を命じる督促状を出してもらえるのが、支払督促です。この段階では、裁判の手続を経ることなく、申立ができますので、労力とコストは通常の訴訟の半分以下と考えても良いでしょう。
・裁判所という国家機関からのプレッシャーがかかる
・費用がかからず、手続も簡単で迅速
・一定期間を経過した後、仮執行宣言の申立をすれば、強制執行がかけられる
ことが、この手法の有利なやり方です。相手方が異議申し立てをすると、通常の訴訟に移行します。
4. 民事調停にて、和解の方向を探る
調停とは、当事者、民間人の調停委員、裁判所が和解に向けて話し合いをする手続きです。裁判所の判断を求めるのではなく、当事者の実情に沿った形で妥協点を探る手続きです。3回ほど期日が設けられ、結論は当事者間で出すのが通常です。
調停が成立すると、調停調書が作成されますので、当事者のどちらかが約束に沿った義務を果たさない場合、強制執行をかけることが可能になります。
調停が不調であった場合は、訴訟で争うという流れになるでしょう。
民事調停の利点は、
・訴訟ほどコストと時間がかからず、緊張感もゆるやか
・調停で合意が成立すれば、調停調書によって、強制執行が可能となる(確定判決を得たのと同じ効力があります)
・相手方との関係も、訴訟をした場合ほどには悪化しない
といったことが挙げられます。
相手方に話し合いの余地がある場合には、調停手続きを利用するのも一つの選択肢です。
5. 60万円以下の金額の場合、少額訴訟を申し立てる
60万円以下の少額債権に限定して認められるのが、少額訴訟です。
申し立てをすると、訴状が届き、口頭弁論の期日までに和解に至るケースもあります。
勝訴が出れば、仮執行宣言が付与され、強制執行に踏み込める権利が得られます。
コストが安く、手続が簡単、迅速というのが、この少額訴訟のメリットです。
簡易迅速な反面で、争いの内容が複雑な場合には不向きな手続きです。