不動産登記の必要性
本来契約というのは当事者の「売りましょう」「買いましょう」という意思表示があるだけで、成立します。
契約書等の書面すらいらない、というのが法律上の建前です。しかし現実には、不動産を買えば契約書を作るし、法務局に出向いて所有権が移転したことを公示するための登記も行います。
この理由は、もし登記をしなかった場合、自分がその不動産の所有者であることを他人に主張することができないからです。
他人に主張する内容としては、例えば、「この家は私が所有する不動産です」「この土地は当社の担保として預かっております」ということです。
所有権や抵当権などの「権利」は目に見えないものです。しかし、これらの権利を登記という形にすることで、誰の目から見ても存在がはっきりわかるようになります。
このように不動産登記を行うことで、所有する権利を守ることができますし、安心して取引することもできるようになります。
以下では具体例を用いて、登記の必要性をご説明いたします。
Aさんという人物が所有しているJR高田駅近くの不動産を、娘の新婚祝いのために購入してあげようとしているBさんという人物と、
老後を過ごすために購入を考えているCさんという人物が居たという設定で、事例をご紹介しましょう。
さて、BさんとCさんのどちらが所有権を得ることができるでしょうか。
これは、Aさんと先に取引した方ではありません。先に登記した方が所有権を獲得することになります。
不動産登記による権利獲得は早い者勝ち!
まず、AさんがBさんに対して甲建物を売りました。契約書もちゃんと取り交わしています。
しかしBさんとしては契約書があるからという事で安心して、Aさん→Bさんへ所有権が移転したという事実の登記を法務局に申請することを怠っていました。
実はAさんは悪い人で登記記録(登記簿)上は自分がまだ所有権者なのをいいことに、CさんをだましてCさんに対しても再度甲建物を売りました。(二重譲渡と呼ばれています。)
そしてBさんより先にCさんに所有権移転の登記を行ったとします。
Aさんのこの行為は犯罪なのですが、Bさん,Cさんから代金を二重取りして満足を得たAさんは通常姿をくらましてしまうでしょう。
さて、残されたBさん、Cさん間では、事実上Aさんに代金の返還請求をする事ができなくなった以上、どちらが甲建物の真の所有者であるか争うことになります。
不動産は価値の高いものなので、裁判になることもあるでしょう。この場合、Bさん、Cさんのどちらが勝つのでしょうか?
一見契約を先に交わしたBさんの方が優先するようにも思えます。
しかし所有権自体は契約だけで取得できるものの、二重に契約がおこなわれたような特殊事例において、民法は契約の前後ではなく、登記を先に申請したものを優先しています。
結局、売買契約をしたのは後だったにも関わらず、先に登記を備えたCさんの方が勝ち、最終的な所有権者として確定することになります。
結局BさんはAさんから代金も帰ってこない、不動産も取得できないという事で多大な損害を蒙ります。
不動産は高額のために上記のAさんのような犯罪行為をする人がいます。そこで自分の財産を守るためにも不動産を買った時にはしっかり登記をする必要があります。
このように、登記に関して知識がないために、こういったトラブルに巻き込まれる例もあります。
そうならないためにも、不動産の登記はしっかり行いましょう。